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電子出版制作・流通協議会



News Letter Vol.009 電子出版物管理技術(DRM)入門セミナー

電子出版の著作権管理技術セミナー

2012年06月08日 13:30-15:30
日本教育会館7階 中会議室(701・702)

1.著作権管理技術の概要について

 電流協事務局

 

 電流協の環境整備委員会では、「著作権管理による技術的側面および制度・権利的側面の研究」・「電子書籍の権利集中機関の検討、権利集中機関の設置を望む関連団体等との連携を検討する」・「ライツマネジメントの整備によるビジネス活性化モデルの研究を行う」という内容の活動を行っています。
 電子出版においては、著作物を有効に管理するため、複製防止・閲覧の制限をかけることが必要となります。今回のセミナーでは、そのような著作権の管理について技術的側面をテーマとして取り上げました。
 電子出版物の流通において、一部では著作権管理技術をかけずに広く利用させるべきとの、考え方もあります。しかし、一般的には、著作権者は何らかのDRM等をかけて著作物を管理して欲しいという要望があると思われます。そこで現在、使われている著作権管理技術について説明をさせていただきます。
 今回のセミナーでは、著作権を守る技術の紹介が中心ですが、電流協としては著作物を適正に管理することで、著作物が増加し新しいビジネスが生まれることを目指しています。
 ネットビジネスで先行している音楽業界では、著作権の集中管理や著作権料の分配などがしっかり行われています。これらの事例を参考にしながら、今後の電子出版はどのような方向に進めればいいかを検討して行きたいと考えています。
 著作権を管理する技術では、複製防止やトラッキングまた、流通しているコンテンツが正規版かどうかを証明できる技術があります。電子出版の場合、コンテンツを自分の端末にダウンロードしなくてもネットにつながっていれば閲覧できる形のサービスを提供することで、時間的・回数的な制限をかけた提供の仕方も可能です。
 また、現在、問題になっているのは個人がデジタル化したいわゆる「自炊」の電子出版物が不正に流通されてしまうことです。海外では、事実上堂々と不正物が流れている状況で、出版社も問題視しています。
 この度改正された著作権法では、私的な利用であっても、それを知って行った場合は罰則がかけられるようになりました。
 また、DRMがかけられた著作物について、DRMを故意に破って著作物を流すことに罰則が加われば、DRMが見直されることも考えられます。こうした背景から、技術情報をご紹介したいと思います。

2.サイファー・テック株式会社

「サイファー・テック社の提供するDRMサービスについて」

 吉田基晴(よしだ もとはる)

 

 弊社は、暗号技術等をベースとした、著作権保護・情報漏洩対策を行っています。
 弊社の技術は、コンテンツの著作権保護技術としてBookLive!・honto・丸善・トーハン・DMM・ベネッセ・楽天・Yahoo!等で採用いただいている他、企業知財の漏洩対策として精密機器メーカー等でも採用されています。
 不正コピー/不正流通の実態として、ゲームの修正パッチが販売数の20倍もダウンロードされたり、ユーザーサポートで商品のシリアル情報を確認する仕組みに変えたらサポート依頼が1/10になるという例があります。
 また、海外の違法サイトでは、日本を中心とした精密機器メーカーの関係者限定配布マニュアル・ツールが販売・流通されていたりします。こうした不正流通を法的手法で防止しようにも、海外でやっていることなので難しいのが実態です。
 DRMとは、デジタル・ライツ・マネージメントの略で、日本語では「電子著作権管理」になります。必ずしもコピー防止ではなく、ライセンス提供におけるルールを適正にコントロールする仕組みです。
 DRMに明確な定義はありません。暗号や認証などで不正コピーの無効化を図る手法や、電子透かしを使って拡散を抑制をする手法もあります。DRMを実現するにあたっての手法は、コンテンツの価値や必要とするセキュリティ強度等に応じてさまざまな手法があってしかるべきだと考えています。
 電子書籍市場の近未来における著作権保護の現実を考えるとき、ポイントは三つあります。
 一つ目は、電子書籍の主戦場が、ガラケーからスマートフォンへ移りつつあることです。ガラケーでは端末の機能が比較的限定的で、DRMもプラットフォーム側で用意されていましたが、スマートフォンでは端末が高機能化した為に不正コピーのリスクが高まっただけでなく、DRMも配信事業者マターに移りました。
 二つ目は、多様化するプラットフォームです。PC・ガラケーに加えてスマートフォンとタブレットが増え、OSも、Windows・MacOS・iOS・Android等が加わりました。そして今後も新しいプラットフォームが出てくると考えられます。多くのユーザーに配信するには、拡張性の高いDRMが必要になります。
 三つ目は、多様化するフォーマットです。現状でも多くの電子書籍フォーマットがあり、アプリとして書籍を販売する例もあります。また、例えば動画を用いて書籍を表現することも可能と考えれば今後も増え続ける可能性があります。
 弊社では、こうした課題に向けた、マルチプラットホーム・マルチフォーマット対応のDRMサービスを提供しています。
 スマートフォンの時代になって、販売者とユーザーの接点がブラウザではなくアプリケーションに変わりました。そこで、アプリの開発フェーズでDRMを組み込むための「DRM開発キット」や、ハード的な初期投資を抑えられる「ASPサービス」を用意しています。
 DRMには課題もあります。
 増え続けるプラットフォームとデータフォーマットへの対応にコストがかかります。また、電子書籍配信事業者が採用するDRMの違いでサービスごとに本棚が別になってしまうなど、ユーザビリティの向上の制約事項になっている事も否めません。
 お客様からの要望では、一定期間が経過したらDRMがかかっていない状態にしたいというものもありました。一定期間はDRMがかかっていて、ある程度経過したら中古で販売・流通させたいというものです。
 また、過去の事例ではDRM提供会社が突然事業から撤退して、暗号化されたデータだけが残るということがありました。デジタルは劣化しないといいますが、DRMやサービスが終了するという劣化があります。このことから、事業継続性も重要なポイントになります。
 著作権の保護とエンドユーザーにとっての利便性、そしてビジネスの継続性(売上の維持拡大)。これらのバランスを高いレベルでとれるかが、今後のコンテンツ流通の課題だと考えています。

3.アイドック株式会社

「セキュアな配信・閲覧からソーシャルDRMまで。
 選べるDRM”bookend”とは?」
 クラウド書庫・デバイス間共有・マルチプラットフォーム。選択する時代のDRMサービス

菊池邦洋(きくち くにひろ)

 

 弊社は、DRM製品をSaaSで提供しており、パピレス・ビットウェイなどの書店サイト、NEC文教システムやLEC東京リーガルマインド等の学校教材ビジネス、大手企業での文書共有など150を超えるサービスで使っていただいています。
 bookend(ブックエンド)サービスは、電子コンテンツをセキュアに配信販売するためのSaaSサービスで、PDFとEPUB・HTMLファイルに対応して、ワンソース・マルチプラットフォーム配信が可能です。マルチデバイス・マルチフォーマットのビューアを用意しているため、ユーザーはフォーマットを意識せずに利用できます。
 SaaSを採用することで、本棚でアプリがいっぱいになることもなくなります。「Web書庫」サービスはクラウドの書庫に、書店で買った本のバックアップや、別の書店のアプリでもWeb書庫が共通であれば自分のアプリの中にまとめられます。
 電子書店の課題は、かなりのレベルで解決できているのではないかと考えています。
 bookendでコントロールしている項目は、コピーや再配布の抑止・画面キャプチャ防止/抑止・印刷許可オン/オフ・配信/共有端末の台数と種類・閲覧期間設定・再ダウンロード制限です。
 PCでは画面のキャプチャーソフトが有料のものも含めて、たくさん出ています。これらをブラックリスト化してネットワーク上で管理しており、全ページの一括キャプチャを防止します。
 印刷許可オン/オフでは、楽譜やペーパークラフトの型紙など紙の印刷は可能ですが、PDFプリンターを選べなくすることでデジタルコピーを防いでいます。
 配信/共有端末の台数と種類をコントロールして、対象をPCだけに限定したり、PCで販売してiPadで閲覧可能にしたりする場合などです。
 再ダウンロード制限は、一つの書籍を二台まで共有可能にしていた場合、同じデバイスで再度ダウンロードすると二つの閲覧権限ができてしまうのでこれを制限できます。
 こうしたコントロールは、コンテンツの配信単位で設定可能です。DRMで暗号化する際に設定する必要がなく、ECサイトで決めることができます。
 販売・販促・マーケティング面では、Web書庫にダウンロード後15分間だけ好きなところを読める本をプッシュ配信します。つまり、時間制限を付けて全文を公開します。閲覧期限が切れると購入リンクを提示し、購入後は製品化のDRM情報を流すことで製品版に変わります。この仕組みであれば、保護された状態で本文データそのものを販促に利用できます。
 ソーシャルDRMで流通して成功させるには、多くのビューアが提供されるオープンなフォーマットで準備しておかないと意味がありません。
 ウォーターマークは、書店での配布時に埋め込むと漏洩リスクが増えます。従来型のDRMをかけた状態でビューアに渡し、ユーザーが任意のタイミングでウォーターマークを埋め込む形を考えています。一ヶ月後に、ノンDRMに近い状態にしたいという要望も、この方法であれば可能です。一定期間に購入した人だけに、ソーシャル化可能な本を売るということも可能です。
 Bookendの特徴は、配信スタイル・ファイルフォーマットや暗号化の方法なども選べる点です。オンライン閲覧やWeb書庫に直接入れ、ダウンロードプロセスをサイト側に持たない形も可能です。Web書庫を使うことで、ダウンロードのエラーや再ダウンロードなどの対応を減らすことができます。
 電子書籍の制作は、管理画面で簡単に行えます。すでにある紙のデータを活用し、JPEGの束を作って読み込ませます。紙の本を作り終わった直後に、この作業をさせるだけで、紙と電子を同時流通させられます。
 簡単に制作できるツールなども用意していますので、詳しくはサイトをご覧ください。
 http://www.keyring.net

4.新日鉄ソリューションズ株式会社

「Attributorサービス」市場における、コンテンツの流通を監視する技術について

 加藤悠祐(かとう ゆうすけ)・江幡修一(えばた しゅういち)

 今後、デジタルコンテンツビジネスは市場が膨らんでいくと、不正利用も比例して増えて行くと考えられます。
 DRMが破られてしまった場合や、紙媒体のスキャン・自炊・コピーなどで不正規流通に繋がります。DRMは必要ですが、そこを抜けた不正利用・不正流出対応も必要です。
 書籍の不正流通は、大きく分けて三つあります。
 一つ目は、画像系です。マンガや写真など、1ページが一つのJPEGファイルという形で、一冊や一話という単位でZIP/RARで圧縮されています。ライトノベルやコミックが多くあります。
 二つ目は、テキスト系です。ここには、EPUB・MOBI・PDFが多く、TXTやDOC形式もあります。
 三つ目が、オーディオブックです。車通勤の文化がある国では通勤中にオーディオブックを利用しています。Attributorサービスで米国某大手出版社の不正流通状況を調査した結果、オーディオブックの不正流出が最も多かったという結果も出ています。
 不正流出したファイルは、Turbobit/uploadedなどのCyberlocker(サイバーロッカー)と呼ばれるサイトに置かれます。鍵がかかっていないロッカーのようなもので、場所さえわかれば誰でもダウンロードできてしまいます。
 次に、Torrentサイトです。専用ソフトをインストールして利用するので、Cyberlockerよりはハードルが高いと思います。
 オンラインリーディングサイトは、ダウンロードではなく、Web上で読めるコンテンツを提供するサイトです。コミックなど紙で印刷されたコンテンツをスキャンレーション(スキャン+トランスレーション)して掲載されています。
 不正ファイルがアップされると、ダウンロードした人がさらにコピーをして拡散していきますので、必要な対策を必要なタイミングで行うことが重要です。
 弊社は、不正利用防止サービス「Attributor(アトリビューター)」サービスのパートナーとして2011年4月にサービスを開始しました。Attributor社は、2007年からサービスを開始し、世界50社以上の出版系企業が利用しています。
 米国の6大出版社(Big6)のうち、5社が利用しており、日本国内の出版社においても利用している実績があります。
 サービスは、メタデータ(検索ワード)をもとにクローリング・検知・削除対策を実施します。元になるコンテンツのデータを提供していただく必要はありません。また、インターネット上にある、あらゆるファイルが検索対象となるのでフォーマットによる制限はありません。
 現在、全世界で30万タイトルのコンテンツを監視し、月間12万件の削除勧告、Cyberlockerでは削除率95%という成果を上げています。
 監視対象として検索するタイトル名や著者・キャラクター名などのメタデータを定義します。数に制限はありませんので、事実上無限に定義できます。また、18の言語に対応しているのでワールドワイドで流出対策が可能です。
 メタデータを元にインターネット上を巡回して不正なコンテンツのリンクのリスト化をします。このリストから世界各地にあるプロフェッショナルサポートが人の目で確認をして本当に不正なものかを検証しています。
 不正なものだと確認されたものは不正利用停止依頼を送付します。一度依頼をしても不正ファイルが消えない場合は、再送付を繰り返し行っています。
 サポートの対象は、CyberlockerとTorrent・ブログサイトです。WinnyやShareなどのP2Pはファイルがインターネット上にないため現在対応が出来ていません。
 レポートは、オンラインで確認が可能で、Cyberlocker・Torrent・ブログサイトの割合や、不正サイトの場所・削除の有無などを確認できます。
 不正対策でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

【講演終わり】

【本文終了】